「緊急人材育成支援事業」とは、厚生労働省の事業の一つで、雇用保険を受給できない者(非正規離職者、長期失業者など)に対する新たなセーフティネットとして、基金を造成し、ハローワークが中心となり、無料の職業訓練及び訓練期間中の生活給付を行う「訓練・生活給付」を内容とした事業の事。主な2つの実施内容は、以下に記載したとおり。
- 職業訓練の拡充
- 新規成長や雇用吸収の見込める分野(医療、介護・福祉等)における基本能力から実践能力までを習得するための長期訓練
- 再就職に必須のITスキルを習得するための訓練
- 訓練期間中の生活給付
- 訓練を受講する主たる生計者に対して、訓練期間中の生活費を給付(月10万円、扶養家族を有する者:月12万円)
- 希望者には貸付を上乗せ(月5万円まで、扶養家族を有する者:月8万円まで)
平成22年度の実績では、訓練の受講者数が、およそ25万人、生活給付の認定件数がおそよ17万人。
この制度は、事業の制度設計を厚生労働省、訓練人的基準の作成や事業運営に係る調整、訓練実施計画の認定などを中央職業能力開発協会が担っている。訓練実施機関は、専修各種学校、教育訓練企業、職業訓練法人、社会福祉法人、事業主であり、訓練実施に係る助成は、受講生一人当たり月額で、助成される。その為、定員が過半数を割れると、実施が見送られることがある。
基金訓練の種類
- 職業横断的スキル習得訓練コース(3カ月程度)
文書作成、表計算・図表作成、プレゼンテーション制作等の職業横断的な情報技術等(ITスキル等)が不十分な者を対象とした訓練。 - 新規成長・雇用吸収分野等訓練コース
医療、介護・福祉、IT、電気設備、農林水産業等の新規成長分野又は雇用吸収の見込める分野、その他地域の人材ニーズがある分野で求められる基本能力から実践能力までを習得するために、以下の構成により実施する訓練- 基礎演習コース(3~6か月程度)
若年者に配慮し、(1)就職に必要な基礎力の要請と、(2)主要な業界、業種に係る短期間の体験等の提供等を内容として、実践的演習に向けたレディネス(職業準備性)の付与及び具体的な職業選択へ向けた動機付け支援する。 - 実践演習コース(3~6カ月程度)
新規成長分野、雇用吸収分野等における職種について、(1)座学形式、(2)座学と企業実習等を組み合わせたデユアル形式、(3)事業所における実習形式等により、より実践的な能力の習得を支援する。
- 基礎演習コース(3~6か月程度)
- 社会的事業者等訓練コース(6カ月~1年)
営利を目的とせず、社会教育、環境保全等の社会性の高い事業(特定非営利活動推進法に規定する特定非営利活動に相当する事業)を展開している法人が社会・地域貢献等分野での就業やNPO法人等の起業、経営参画を希望する者を対象として実施する訓練- ワークショップ型訓練
職場を模した作業環境等でのワークショップ、基礎知識習得のための座学等を組み合わせた教育プログラムにより、社会的事業等や関連分野の企業等への就職に当たり求められる職場環境等への適応、基礎的な技能の習得等を支援する。 - OJT型訓練
社会的事業の経営、事業遂行への参画に係るOJT(事業経営者のいわゆる「鞄持ち」研修、事業スタッフとしての実務研修等)、社会的事業経営上の知識習得のための座学等を組み合わせた教育プログラムにより、実践的知識・技能の習得を支援する。
- ワークショップ型訓練
特定非営利活動(特定非営利活動促進法別表より)
保健、医療又は福祉の増進、社会教育の推進、まちづくりの推進、学術・文化・芸術・スポーツの振興、環境の保全、災害救援活動、地域安全活動、人権の擁護又は平和の推進、国際協力、男女共同参画社会の形成促進、子供の健全育成、情報化社会の発展、科学技術の振興、経済活動の活性化、職業能力の開発又は雇用機会の拡充の支援、消費者の保護
実践演習コースの主な実施分野と規模
分野・職種 | 具体的な訓練コース |
情報通信、情報処理、コンテンツ等 | プログラム(JAVAなど)・ソフトウェア・コーディネーター・システム運用・構築プロモート等 |
介護・福祉 | 介護職員基礎研修、ホームヘルパー2級等 |
医療 | 医師事務作業補助者(医療秘書)等 |
農業 | 造園、農業経営等 |
環境 | リサイクル、第二種電気工事士等 |
地域ニーズ | 地場産業、ものづくり、観光、サービス等の地域ニーズに対応したもの(上記分野を含む) |
基金訓練の後継
基金訓練は、雇用保険を受給できない者が対象であり、基礎的能力から実践的能力までを付与するという訓練機関による評価が行われる訓練であり、公共職業訓練とは、区別されていた。公共職業訓練は、主に雇用保険を受給できる者が対象となっている。
この制度設計は、ほとんどそのまま引き継がれ、離職者訓練、求職者支援訓練、通称「ハロートレーニング」として、現在は実施されている。対象者に対する必要な要件は、ほとんど変わっておらず、また受講者に対する給付金・貸付金の要件や金額等も大きく変わらない。
基金訓練時代の時は、給付金の支給を受けるためには、出席日数が、8割以上あることが必要となっていたが、現在の求職者支援訓練は、原則として、全ての訓練実施日に出席しなければならないとなっている。過去に、8割以上となるように計算をして、訓練を欠席する者などが散見された為であろう。
日本は、一度就職できないと、長期化してしまいがちで、再就職がかなり難しい。これは、事業者が、雇用リスクに敏感であるという事も影響しているが、基本的には、日本では、転職を繰り返す人材は、警戒される風潮があり、過去に何か問題があったかなどの調査をするよりは、新卒採用をしたほうが、事業者も扱いやすいといった側面が影響しているといえる。
どちらにしても、再就職は、訓練期間中であっても早期に活動をして、訓練終了を待つことなく、再就職をしたほうが、メリットが多いと感じる。
投稿者プロフィール
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大学を卒業して、映像プロダクションに勤めました。
数社を渡り、福岡市インキュベート施設で独立。
2000年:映像音響処理技術士
2013年:マルチメディア検定エキスパート
2014年:Webデザイナー検定エキスパート
一覧
- 古きを知る2021年9月17日緊急人材育成支援事業通称「基金訓練」
- google2021年8月27日【終了】google Adsense スマホアプリ
- dvd2019年10月16日赤ずきんは世界観が独創的で魅力的な映画
- 用語集2019年7月24日アイリスとは